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分子標的療法

分子標的治療について

分子標的治療についてのイメージ

「分子標的治療」という言葉は主に癌に対する治療を指して用いられることが多く、この言葉はモノクローナル抗体の開発が始まった1980年代初頭より使用され始め、メシル酸イマチニブやゲフィチニブなどの小分子化合物(後述)が臨床使用され始めた1990年代末から一般的に使われるようになりました。

ここ20年でガン遺伝子は活性化やがん抑制遺伝子の異常により発癌するだけでなく、発がんの発育にはガン成長因子やそのレセプターの存在、細胞分裂を刺激する蛋白の存在が必要であることがわかってきています。

そこでこれらガン成長因子やそのレセプター、たんぱく質を抑制す
ればガンを抑えることができるのではないかと考えられた治療がこの分子標的治療なのです。
ガン遺伝子が興奮してガン成長因子をどんどん放出しても、これらのレセプターや分裂促進たんぱくが働かなければ、ガンは増殖しないことがわかりました。ガン成長因子とそのレセプターはカギとカギ穴の関係にあり、ガン成長因子レセプターを抗体で蓋をすると細胞分裂への過程が遮断されます。ガン成長因子を働かないようにさせたり、分裂促進蛋白の活性化を抑えれば、これも細胞分裂を阻止することも可能になりました。
これらのたんぱく質を標的とすると療法は分子標的治療とよばれ、ここ数年、新しい薬がもう開発間近にあります。
これらの新薬を、従来の20世紀型の抗がん剤と区別しております。
まず蛋白の活性化を阻止することにより細胞分裂をストップさせます。細胞分裂を行なっている細胞にしか働きませんから、最も活発に分裂しているガン細胞に強く作用し、近くにある正常細胞が受ける影響は極めて少ないです。

特徴として

特徴としてのイメージ

従来の抗癌剤(殺細胞性抗癌剤)が細胞傷害を狙うのに対し、分子標的治療薬は多くが細胞増殖に関わる分子を阻害します。そのため臨床応用される以前は分子標的治療は腫瘍を縮小させず、増大を抑えるのみであると考えられていました。癌細胞特異的に効果を示す(ことが期待できる)ため至適投与量は最大耐用量ではなく、最小有効量でありまた最大耐容量と最小有効量の差が大きい可能性があり、そのため毒性のプロファイルが異なることが期待されます。
しかし、実際に分子標的治療が広く行われるようになると分子標的治療薬は腫瘍縮小効果を示し、それもゲフィチニブの標的分子である変異EGFRのように当初想定していなかった未知の分子が標的となり臨床効果を示す可能性がでてきました。毒性に関しても間質性肺炎のように想定していなかった致死的毒性が出る可能性があり、
一概に毒性が少ないとは言えないことが判明しました。

化学療法薬と分子標的薬では、効き方はどのように違うのだろうか。
よく知られているように、化学療法薬は、がん細胞を攻撃するだけでなく、正常細胞も同じように攻撃してしまう特徴があります。そのため、がん細胞を殺そうとすると、正常細胞にも深刻なダメージを与えることになってしまいます。化学療法薬による治療で重い副作用が現れるのは、がん細胞も正常細胞も区別することなく攻撃するからなのです。
その点、分子標的薬は、がん細胞が持っているある特定の分子をターゲットにするので、がんに対する特異性が高いという特徴があります。
つまり、がん細胞には効果を発揮しますが、化学療法薬のように、正常細胞まで一緒に攻撃してしまうようなことはないのです。だからといって、副作用がないわけではありませんが、化学療法薬の副作用とはかなり違うものになっています。
また、化学療法薬は、バイオ細胞やマウスを使った実験によって、がん細胞が死ぬことを指標にして開発が進められてきました。そのため、似たような作用メカニズムの薬ばかりが、いくつも生み出されるという結果を招いてしまいました。
その点、分子標的薬は“理論から開発を進めるため、今までの化学療法薬がターゲットにしてこなかった標的を選ぶことができます。実際、新しい分子を標的にした薬がたくさん登場しているそうです。副作用の現れ方も、化学療法薬と分子標的薬では大きく違っています。
化学療法薬には、化学療法薬特有の副作用があります。白血球や血小板が減少したりする骨髄抑制、脱毛、消化管の粘膜障害による口内炎や下痢といった副作用です。もちろん、それぞれの化学療法薬が特有の副作用を持っていますが、共通する部分が多いのが、化学療法薬による副作用の特徴。それに比べ、分子標的薬の副作用は、薬によって実にさまざま。心不全を起こしやすくなる薬もあれば、血栓症や高血圧、消化管穿孔が問題になる薬もあります。頻度は低いのですが、こうした重い有害事象が起きるのも、分子標的薬の特徴なのです。