遺伝子検査

がんと免疫

まず始めに、「がん細胞」とはどんな細胞なのかと言うことをお話したいと思います。次に、免疫とは何か?また、「免疫力が低下するとがんになるのか?」についても考えて見たいと思います。さらに、がんを免疫で抑えることは可能か?そして、がんに対して免疫をつけるにはどうすれば良いか?このような事をご説明致します。


「がん細胞」とは

 まず、「がん細胞」とは何かという命題ですが、一般的には「がん細胞」とは「増殖の制御を失って無制限に増殖する細胞」と考えられています。しかし、がんについての研究が進んで、最近分かってきたことは、例えば、細胞分裂を促進するがん遺伝子、c-mycと呼ばれる遺伝子がありますが、この遺伝子を発現させると、細胞は分裂して増えようとしますが、同時に、細胞の「自殺遺伝子」が活性化され、「アポートーシス」という、細胞死の現象を起こして死んでしまいます。そう言うことが分かってきました。
 すなわち、細胞分裂・増殖のシグナルと言うのは、実は「細胞を自殺させるシグナル」を発動すると言うことが最近知られるようになりました。それでは「がん細胞」とは一体どういう細胞なのか?実は、「がん細胞」と言うのは単に「増殖する細胞」ではなくて、「増殖しても、死なない細胞」、すなわち、「細胞死、アポトーシスから逃れるメカニズムを獲得した細胞」が「がん」であると定義できます。ですから、死なないメカニズムを持っている訳ですから、「がん」は色々な治療法に抵抗する、やっかいな存在である大きな理由になっています。

がんはどこから生まれるのか?

それでは、がんはどこから生まれるのでしょうか?私たちの体は約60兆個の細胞でできています。そして、毎日約1兆個の細胞が死んで、同じ数の細胞が細胞分裂で新たに作られています。この1兆個の新しい細胞のうち、5000〜6000個ぐらい出来損ないの細胞が生まれ、これががん細胞になると考えられています。従って、私達の体の中には常に数多くの「がんの芽」が生まれている訳です。

「がんの芽」が「がん」にならないはなぜか?

 しかし、多くの場合、私たちはがんを発病しません。これは、私たち体の中にある「免疫細胞」が、次々とがん細胞を殺して、がんを「小さな芽」のうちに摘み取ってくれるからだと考えられています。言い換えれば、私達の「免疫システム」が体のすみずみまでパトロールして、「がん細胞」を殺してくれるために、がんを発病しないという事になります。
 私たちの体の免疫細胞が「がん」を監視していることから、このメカニズムは「免疫学的監視機構」と呼ばれています。従って、「がんの芽」ができる事と、私たちの命を脅かす「がん」ができることは全く違うと言えます。
 もう一つ重要な事は、もし、1個の「がん細胞」が私たちの体に備わっている免疫の監視をすり抜けたとしても、約10億個(1g)まで増えるのに平均9年もかかると考えられています。大体「早期がん」として発見されるがんは1gぐらいの大きさですから、1個のがん細胞が「がん」として発見される大きさにいたるまでに9年と言う長い、長い期間がかかっていると言うことになります。従って、がんを退治するチャンスがこの長い期間に何度もあるわけです。生活習慣を変えて免疫力を強化すれば、がんがなくなる可能性もあるわけです。

免疫とは?

それでは免疫とは何でしょうか?「免疫」と言う字は、「疫病から、まぬがれる(免れる)」と書きます。これは、「一度かかった伝染病に二度はかからないこと」を意味しています。ジェンナーというフランスの科学者は種痘法を開発して、この概念を実行し、天然痘をこの地球上から撲滅しました。現代では、もう少し広い概念で、「体内に病原菌や毒素などの異物が侵入した時、あるいはがんのようなものが発生した場合に、これを選択的に排除しようとする機能」、すなわち「自己の生存にとって不利益な外敵から自分を守る仕組み」を免疫と呼んでいます。

免疫細胞の種類

免疫細胞の種類には、1.顆粒球、2.マクロファージ、3.リンパ球、大きく分けてこの3種類があります。顆粒球というのは細胞の中に顆粒を持っていて、感染症などの時に細菌などの外敵を活性酸素で攻撃します。マクロファージは「貪食細胞」とも呼ばれ、進入してきた病原体をパクパク食べて処理します。また、リンパ球は特定の病原菌やがん細胞などに対して攻撃を仕掛ける特殊部隊と言えます。これら、顆粒球、マクロファージ、リンパ球は白血球とも呼ばれ、血管やリンパ管を通って全身にくまなく移動しています。

免疫の種類

免疫の種類は液性免疫と細胞性免疫に分けられます。液性免疫は、主に抗体による免疫で、血清の成分によって行われる免疫現象です。この液性免疫を担当しているのが、B細胞、またはBリンパ球と呼ばれる免疫細胞です。液性免疫では、抗体は補体などと一緒になって抗原を破壊しています。
もう一つは、細胞性免疫です。これは、字の如く細胞成分によって行われる免疫現象で、免疫細胞によって行われます。特に、T細胞が主役です。この他に、マクロファージ、NK細胞などにより起こされる免疫反応も細胞性免疫です。細胞性免疫ではT細胞などの免疫細胞は直接抗原を攻撃するのが一つの特徴です。

また、免疫反応の種類により特異的免疫反応と非特異的免疫反応に分類することもあります。

「がんの芽」を摘み取るNK細胞

ここで、NK細胞についてお話します。「がんの芽」を手当たり次第、摘み取ってくれるのが、「NK細胞(ナチュラルキラー細胞)」と呼ばれる免疫細胞です。NK細胞はT細胞にもB細胞にも属さないリンパ球です。腫瘍細胞を融解する機能を持っていて、生体内でも抗腫瘍作用があります。特徴としては、NK細胞は特定のがん細胞を殺すのでなく、手当たり次第にがん細胞を殺します。このため、NK細胞の作用は「非特異的免疫反応」と呼ばれています。NK細胞は、がんの発症を抑え、発がんの初期段階で特に重要な役割を果たしていると考えられています。また、NK細胞は、特定のがんを攻撃するT細胞による特異的免疫反応が発動する前に、NK細胞は「がんの芽」を摘み取っています。

ここで、NK-LAK、T-LAK、NKTについて説明し、CF-LAKの導入の話しにする。

免疫の低下は発がんを促進するか?

次に免疫の低下は発がんを促進するどうかについて考えてみます。すなわち、免疫が低下すると「がん」ができるのというのは本当か考えてみましょう。例えば、エイズと言う病気がありますが、エイズはTリンパ球、特にCD4と言うTリンパ球にエイズウイルスが感染して、T細胞が無くなってしまう病気ですが、T細胞の免疫が低下すると、カボジー肉腫や悪性リンパ腫などの悪性腫瘍が出来て、多くのエイズの患者さんがこれらの悪性腫瘍で亡くなっています。死亡原因になっています。また、慢性肝炎や肝硬変症などの慢性疾患では、NK細胞の活性が低下していますが、このNK細胞の活性低下が肝臓がんの発がんに関係すると考えられています。すなわち、何らかの原因で「免疫が低下」すると、がん細胞は免疫の監視(免疫学的監視機構)をすり抜けて、増殖すると言えます。

S−11 免疫力が低下する原因

しかし、多くの場合、私たちはエイズや肝硬変症に罹っていません。それでは、何が原因で免疫は低下するのでしょうか?実は免疫力が低下する一番大きな理由は加齢だと言われています。免疫力は20〜30代でピークに達し、40歳過ぎから急激に低下します。この40歳過ぎのいうのが大体発がんの年齢になっています。それから、肥満・生活習慣病、暴飲暴食、アルコール摂取過剰、ビタミン不足、鉄の過剰摂取、も原因になります。ストレス、過労、運動不足、喫煙、冷えも良くないと言われています。その他、抗生物質などの化学物質あるいは紫外線なども免疫を低下させることが証明されています。また、紫外線や排気ガスなどの環境因子も免疫を低下させます。

S−12 「がん」自体も免疫を低下させる

さらに、「がん」自体も免疫力を低下させることが分かってきました。例えば、がん細胞はTGF-βやVEGFと呼ばれるサイトカインを分泌します。これらのサイトカインが免疫を抑制する事が明らかにされています。また、がん細胞はFasリガンドと呼ばれる「細胞を殺すサイトカイン」を発現し、細胞障害性T細胞のアポトーシスを誘導します。これらの現象は「免疫学的逃避(Immune escape)」と呼ばれています。これは、がん細胞自身が免疫力を低下させ、生き延びようとしていると言えます。

S−13 がんになると色々な原因で免疫が低下する

がんになると色々な原因で免疫が低下することがわかりましたが、それでは「がん」になっても免疫力をパワーアップする事は可能でしょうか?また、具体的に何をすれば免疫力をパワーアップできるでしょうか?つぎはこれを考えてみましょう。その前に、まず、免疫細胞はどのように癌細胞を殺すかのか、そのメカニズムについてお話したいと思います。

S−14 がん細胞を殺す「殺し屋細胞」

 がん細胞を殺す免疫細胞は「killer cell」と呼ばれています。すなわち、「killer」は殺し屋、「cell」は細胞ですから、「killer cell」は日本語では「殺し屋細胞」です。
 「殺し屋細胞」には、もともと自然に体に備わっている「殺し屋細胞」とTリンパ球由来の「殺し屋細胞」があります。もともと私たちの体に自然に備わっている「殺し屋細胞」は、自然に備わっているのでnatural killer cell呼ばれて、頭文字をとって、NK細胞と呼ばれています。NK細胞は活性化されると手当たり次第にがん細胞を殺します。
 また、Tリンパ球由来の「殺し屋細胞」は、「細胞傷害性Tリンパ球」と呼ばれています。細胞傷害性Tリンパ球は、NK細胞とは異なり、特定のがん細胞を殺します。
 しかし、どちらも、相手を選ぶか、選ばないかの違いはあっても、がん細胞を殺す機序は同じであると考えられています。
 
S−15 「殺し屋細胞」ががん細胞を殺す機序

 「殺し屋細胞」ががん細胞を殺す方法は2つあります。一つは、「殺し屋細胞」が細胞表面にfasリガンドという「刀」のような蛋白を発現してがん細胞と接触して殺す方法で、


S−35 ストレスは免疫を低下させ、笑いは免疫を強化する

そのメカニズムはまだ究明されていませんが、さまざまな実験や調査により、ストレスが免疫力を低下させることがわかってきています。阪神大震災後の生活でストレスを受けていると答えた人は、ストレスを感じないと答えた人よりも10〜25%も免疫力が低下していた、という調査結果などがその例です(大阪大学医学部)。
従って、がんに罹るということは全ての人にとってストレスになるわけですが、そのストレスをストレスとして強く感じてしまう人は免疫が低下してしまう可能性があります。すなわち、ストレスがあるか無いかではなくて、ストレスがあっても「ストレスをストレスと感じないこと」が大切といえます。ストレスがあっても、ストレスをストレスと感じなければストレスは無いのと同じです。これは「がん」という病気と向かい合うときに極めて大切なことです。
それではどうすれば良いかと言うと、
1.自分の病気を「客観的に見ること」が重要です。病気になるとどうしても気に病んでしまいます。難しい事ですが、自分の病気を他人事の
2.病気に対して積極的な態度になること。病気は悩んでも治るなら、「薬」はいりません。りません。逆に悩めば悩むほど悪くなります。
3.後悔しないこと。
4.出来る深刻にならないようにする。病気に気持ちを支配されないようにすること。
5.暗示をかけて元気になること。